駒留
無垢材の甲板(テーブルトップや、箪笥の天板と呼ばれたりする一番上に乗せられる板)は湿度によって伸縮を繰り返しています。その動きを妨げることなく本体やフレームに固定しなければ、甲板に割れが発生したり、接着した部分が切れたりする問題が発生します。
その対策として最もポピュラーな工法(ジョイント法)の一つが駒留と呼ばれるジョイント法です。しかし、このポピュラーで、簡単と考えられている駒留法も、押さえる部分を押さえて使用(施工)しなければ故障が発生する場合もありますので注意しなければなりません。
写真1は木製の駒によって無垢材の甲板をテーブルのフレームに取りつけた例です。
駒の先はフレームに開けられた「小孔」に差し込まれ、駒は甲板に木ネジで固定されます。駒は甲板に固定されたまま甲板の伸縮に伴って小孔の中をスライドします。その結果、甲板の伸縮は妨害されず、故障の発生を最小限に押さえることができます。
写真2 は、甲板の幅方向に開けられた「小孔」と駒の関係を示しています。駒の幅は25mm、小孔の幅は30mm です。この中をスライドします。
甲板の長さ方向の伸縮はほとんどないと考えていいわけですから、小穴の幅は駒とほとんど同じにしています。1~2mm のクリアランスです。
ここで問題となってくるのは木製駒の収縮方向です。ここでは木目(年輪)を水平方向に使っています。駒は矢印の方向に収縮します。もしも、木目を垂直方向に使うと、駒は縦方向に収縮します。その結果、木ネジで止められた駒は緩み、甲板とフレームの締結も緩んでしまうということになります。駒の木取り方向には注意が必要です。
駒に使用する材料は、低含水率のものを使用したほうが良いことは言うまでもありません。
含水率を簡単に下げる方法は、電子レンジを使うか、コタツの中に入れておけば良いでしょう。含水率計でチェックできれば最高です。
その他の注意点としては、フレームと駒の間は密着させず、隙間を持たせます(写真4)。甲板が伸びたとき、縦方向に配置されている駒は小孔に入っていくわけですから、当然入りしろが必要です。
もう一つの理由は、甲板の幅方向を止める駒は横方向の動きをします。甲板の伸縮によって小孔の幅一杯までスライドし、スライド幅がなくなった後、更に甲板が動いても駒は回転できるため甲板の動きを制限しません。
同じ理由により、駒は一本の木ネジで固定します。もし二本の木ネジ(写真6)で甲板に固定した場合、駒は回転できないからです。
また、駒先端部の高さは小孔と同じにしておき、駒の下面には勾配をつけなければなりません(写真5)。勾配を付けることにより、駒先端部の接触面は小孔と水平を保ちつつ、確実にフレーム(本体)と接触し、強く締結できるのです。
フレームを組み立てた場合、往々にして部材の「ずれ(目違い)」が発生します。このずれを修正してフラットにすると小孔の位置は多少ずれます。その場合でも、駒の先端は確実にフレームに接触し、フレームを挟むためです。
さらに、この勾配によって余分な摩擦が無くなり、駒は動きやすくなります。
駒の先端部、フレームとの接触面にはワックスを付けて滑りをよくしています。同様にフレーム上部、甲板との接触面にもワックスを付け、オイル等との接着を防ぎ、スムースな動きを保証するよう配慮します。乾燥したオイルの接着性もばかにできないからです。特に、オイルにニス類を混合した場合の接着性は想像以上に強力で、ときには木部破壊が生じるほどです。
写真6の駒は、フレームの中央に用いる駒です。この駒の小孔は駒幅よりきつめにします。甲板は中央部をこの駒で固定され、ここを中心に左右に均等に伸縮するわけです。
勿論中央部を固定する方法は様々あります。これは一例です。
参考までに金属製の駒を載せておきます(写真7)。ここで問題なのは、金属製の駒です。これには二種類あります。一つはこの写真のようなL型で、もう一種類はフラットな板状の駒です。元来板状の駒は框組甲板に使用されたものです。無垢材の甲板に板状の金属製駒を使用することは強度の点から避けなければなりません。