家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

ファイバーラッシュの座編み

ファイバーラッシュ(ペーパーコード)を用いた座編みの方法です。
私が把握しているファイバーラッシュを用いた座面の張り方は、大きく分けて二種類あります。一つは、ハンス・ウェグナーがデザインした、Y-チェアと呼ばれる椅子や、寿司屋のカウンター用のスツールに張られているタイプ。もう一種類もやはり、北欧の製品に見られるもので、我々は「カナコ」と呼んでいる張り方です。こちらは普通の平織りのように編んでいく張り方です。

アメリカ製のファイバーラッシュを用いる場合、張る前に水で湿らせて馴染みをよくするように述べられています。アメリカンラッシュはデーニッシュラッシュに比べて硬く、たしかに馴染みは良くありません。ただし、私の経験では、湿らせて張ると、後で若干毛羽立ちが発生します。アメリカのテキストなどでは、最後にセラックでシートを塗装したりしていますが、その場合、多少の毛羽立ちは問題ないと思います。私は無塗装で使用していますので、若干気になります。デーニッシュラッシュは湿らせず、そのまま張り、無塗装が基本です。デーニッシュラッシュはそのままでも十分しなり、馴染みも良い素材です。

私が八年前に作り、現在もお客さんの居間で毎日使われている椅子は、アメリカンラッシュを用い、無塗装、カナコ張りにしたもので、事前に水で湿らせずに張りました。このシートを最近見ましたが、まったく問題ありませんでした。かなり強く張った記憶があります。ほとんど弛んでいませんでした。

■用意するもの

ファイバーラッシュ、頭の大きな釘(長さ10mm 程度/ラッシュを止めるためのもの)、木のブロック(ラッシュの間隔をつめるためのもの)、玄翁、大きなクリップ(ラッシュとシートレールを一時的に固定するためのもの/作業を中断する場合に使用する)、ハサミ又はペンチ(ラッシュを切るため)、木工用白ボンド(結び目に塗って緩み防止に使う)等々。

■シートレール加工

シートレール加工 シートの形状が上から見て台形で、シートレールが直線の場合、座面を張る前にサイドシートレールへラッシュのスリップ防止加工を行って下さい。このタイプの椅子に、ラッシュを用いてカナコではない通常の座張りを施す場合、サイドシートレールが斜めのため、ラッシュが後ろへ滑ります。その場合、使っていくうちに座面が緩んでしまします (カナコ張りの場合は大丈夫です)。
これを防止する方法としては、サイドシートレールに、ラッシュと同じ位の直径の丸ヤスリ(チェーンソー用の目立て用が良いようです)で縦方向に溝を入れます(写真左)。あるいは鋸を用いてV字型のノッチ加工を施します。ラッシュの太さにもよりますが、間隔は10〜15mm、深さは2〜3mm程度で良いと思います。間隔は厳密でなくても構いません。ラッシュはそれなりに馴染みます。この加工により、ラッシュは後ろへずれません。

■編み方(1)

座面の形状としては、正方形や長方形のものと、台形のものに大別されると思います。台形の場合の編み方としては、最初に両脇の三角ゾーンを編みます。その部分の編み方として幾種類かあります。そこを処理してしまえば四角いゾーンが残るわけですから、後は四角い座面の椅子(正方形や長方形の座面の椅子)を編むのと同じことになります。まずは、三角ゾーンの張り方を説明します。
編み方(1)は、座面が台形の椅子の座編みの中で、最も簡単な張り方だと思われる方法 です。両脇の三角ゾーンの処理は、釘でファイバーラッシュを一本一本シートレールに止めていくというものです。

■手順 1

イラスト:手順 1 最初に、後ろのシートレールの巾を前のシートレールにマークします。先ず最初に、このマークの位置まで張ってきます(図1)。
この図には書いていませんが、各シートレールの中間にも何箇所か前後左右同じ位置にマークをしておくと張っていくときの目安になり、綺麗に平行に張ることができます。

■手順 2

イラスト:手順 2 左右どちらから張り始めても構いません。
ラッシュの先端をサイドシートレールに釘止めします。使用する釘は頭の大きいものを用います。図では見やすいように、サイドのシートレールの真ん中あたりに止めていますが、実際はかなり前のほうに打ちます。
我々の経験では、デーニッシュネイルと呼ばれる、頭の大きな先端の鋭利な釘が使いやすいようですが、頭の大きめの釘なら問題ありません。最後も釘でラッシュをシートレールに止めます。
ラッシュはかなり強く引っ張りながら編んでください。これは綺麗に編むコツです。

■手順 3

イラスト:手順 3-1 同じ手順で、ラッシュを一本ずつ釘で止めながらマークしたところまで張っていきます。
三角形のゾーンが張れたら、次は中央の四角いゾーンを張っていきます。
全てのコーナーで、上から下〜上から下、というように編んでいきます。

イラスト:手順 3-2 縦、横ができるだけ直角になるように、また、座の中心に向かうラッシュの交点のなす45°の線がきれいな直線となるよう、注意しながら編んでいきます。
ラッシュは適量を手に持ち、ラフに一周を回したら、一辺ずつ強く張っていきます。

一度に多く持ちすぎるとかえって編みにくくなります。最後のほうは中央部の穴が小さくなっていきますから、ラッシュは少ししか持てません。(図3、4)

三角ゾーンを張る 実際に編んでいる場面です。フロントシートレールに鉛筆でマークしてあるのがかすかに見えます。このマークまで編んできます。
このマークはシートレール上に幾つか付けておき、編んでいくときに平行度の目安にするとうまく編むことができます。ラッシュの縦、横のラインを綺麗に平行にキープして編むことが大切なのです。

■編み方 (2) [お勧めの方法]

イラスト:お勧めの方法 1 Y-チェアを、この編み方で編む場合は、「編み方(4)」へ移動下さい。

「編み方(1)」とほとんど同じです。「編み方(1)」は四隅とも同じ編み方だったのに対し、この方法は、対角線同士が同じになります。
つまり、「編み方(1)」は、反対側のシートレール(例えば前から後ろへ)にラッシュを張っていく場合、レールの上から下へ回して、反対のレールの上から下へと持っていきましたが、この方法は、下から来たラッシュは相手側のシートレールの下から入って上へ回るというようにラッシュは常にシートレールと平行に張られます。(図5、6)

イラスト:お勧めの方法 2 スラットバック チェアのように、サイドと前後のシートレールの高さがずれている場合(写真上のようなタイプ。Yチェアなども同じ構造)、この編み方が最もうまくいきますし、将来の緩み度合いも少ないようです。

■編み方 (3)

編み方(1)は、台形座面の両脇の三角ゾーンを張っていくのに、ラッシュの一本一本を釘でシートレールに固定していくという方法でした。
この方法は、ラッシュをシートレールに釘で止めず、最初に二つのリングを作り(図7)、それに通しながら三角ゾーンを張っていくというものです。非常に合理的に見えますが、問題点もあり、あまりお勧めできません(考までに載せておきます)。

問題点として次の事柄があります。

  1. 一本のリングに多数のラッシュを通していくためにリングの周辺が窮屈になってしまう。
  2. 次々とラッシュをリングに通して引っ張るために、リングのラッシュが伸び、最初に張ったシート部分が弛んでしまう。
  3. 釘で一本ずつ止めていく方法は、全てのラッシュが同じ向きに張られます。例えば全て右回りというようにです。しかし、この方法は、反対側のリングに通した時点で、ラッシュは逆回りに戻ってきます。そのために、編み方を左右対称にしなければなりません。それは、同じ手順で編んでいく(張っていく)ということではなく、例えば、全て「上〜下」へ編んでいくのではなく、反対側は「下〜上」というようになります。そのために混乱しがちで、エラーの発生にも繋がってきます。

イラスト:編み方 3-1 リングの長さは、サイドシートレールの長さの半分よりやや短めにしておきます。リングが長いとラッシュが集中しすぎて上手く編めません(図7)。

イラスト:編み方 3-2 リングにラッシュを結び、編み始めます。どのシートレールでも同じように「上〜下」と編んでいっています(図8)。

イラスト:編み方 3-3 反対側のリングでターンしています。今度は「下〜上」と編んでいます(図9)。

イラスト:編み方 3-4 「戻り」の編みが終わりました。全て「下〜上」と編んでいます(図10)。

イラスト:編み方 3-5 再び、「行き」側の編みです。「図8」とまったく同じになります(図11)。

イラスト:編み方 3-6 三角ゾーンを張り終えた後の四角いゾーンの編みです(図12)。

■編み方 (4)

イラスト:編み方 4(捨て巻き) Y-チェアなど、多くの北欧製の椅子にポピュラーに見られる編み方です (図13)。両サイドの三角ゾーンの部分を編まないで、前のシートレールに捨て巻きして編み始める方法です。
簡単で綺麗な方法です。

イラスト:編み方 4(中心部の編み) 捨て編みに続き、連続して中心部分の編みに入ります。
ここでは、「編み方2 [お勧めの方法]」で編んでいます。

編み方 4 後のシートレールの位置を前のシートレールにマークをし、見えにくいシートレールの裏側にラッシュを釘打ちして止め、そこまで捨て編みします。そして通常の編みに入ります。最も簡単で見栄えも良い方法だと思われます。

写真上は捨て編みの後、全体を編み始めた所、下は編み終えた所です。

スタート時に釘で止め、片側を捨て巻きを終えた後、そのまま編みを開始して前に戻ってきた時点で、反対側の捨て巻きを終え、本編みに入るという方法でも編めると思います。
各自様々な方法をトライしてみて下さい。

この編み方はシンプルでモダンなものですが注意しなければならない点があります。次項、図15を参照してください。

■その他

イラスト:最後の処理 (図14)は最後の処理です。座面が正方形の椅子以外は、本編みが終わると直線状の隙間が生じます。この部分の編み方です。
最後の隙間部分は、数字の8字状に編んでいきます。ラッシュを強く引っ張りながら、十分な本数のラッシュを溝部分に入れて編みます。
最後は適当なところで縛ります。既製品の裏面を見てもらうと分りますが、まさしく適当な所で縛っています。緩むのが心配な方は、接着剤を併用しておけば良いかと思います。

イラスト:注意事項 編み方(4)の方法の問題点は、編みによって生じる対角線の位置が、脚の付け根からではなく、三角ゾーンの中央寄からになります。そのため、奥行きに対して横幅が十分広い座面を持った椅子以外は、三角ゾーン以外の四角エリアが縦長になり、最後の部分の隙間溝が横方向ではなく(図14) 、縦方向になり(図15)、見苦しいものになります。
同様に、通常の編み方でも、シート幅よりも奥行きが深い座面を持つ椅子も、最後の部分の隙間溝が縦方向になりますから注意が必要です。

イラスト:スタッフ 海外の資料で、編みの途中でスタッフと呼ばれる「あんこ」をラッシュの中に挿入している場合があります。
天然素材の場合は余った切れ端などを、ペーパーラッシュ(コード)の場合はダンボール紙などを入れ、シートを「もっこり」とさせます((図16)。図は、三角形に紙を切って三個所に挿入した所です。一枚ではなく、できるだけ多く入れます。入りにくい時は直定規のようなもので押し込んでいきます。
長く使っているとラッシュ張りはどうしても隙間が生じてきます。天然素材の場合は同じ材料を用いるので問題ないのですが、ダンボールの場合は見苦しくなりますので考えものです。見た目に違和感があるのです。

イラスト:ラッシュ の結び方 最後にラッシュ の結び方を図示しておきます(図17)。
特にこの方法でなければならないというものはありませんが、参考までに我々が用いている結び方を紹介します。

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