家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

はじめに

家具工房を開くため、熊本県阿蘇郡小国町という山間いの町に引っ越して来ることが決まった後のことです。役場企画班の方から小国町について書かれたパンフレットを頂いたのですが、その中の年間降水量の統計グラフを見ながら、非常にまずいなと感じていました。山間部のため、雨が多いことは予想されましたが、年間降水量は2300mm オーバー、予想される過剰湿度の環境は家具作りにおいては非常に厳しく、故障の原因にこそなれ、決して適しているというものではないからです。しかも、奥まったその場所には、風情は申し分ないのですが、工房となる建物を囲むように川が流れていたのです。
結果的に、この環境が家具製作にもたらす問題の解決には相当の時間とエネルギーを費やすことになってしまいました。

この場所で家具製作を始めてしばらくは、修業した家具屋時代と同じ意識で家具作りをしていました。つまり、昔とほとんど変わらない方法で家具作りをしていたわけです。クレームこそなかったのですが、矧ぎや胴付が切れるなどの故障を経験しました。それは梅雨時期に作った品物であるとか、深く考えず不用意にそこらに積み上げていた材料で製作した品物でした。また、九州に来てから使い始めた材料の一つである、北米産のホワイトオークがけっこう暴れる材料であり、それを用いた家具が展示会場などの冷暖房の効いた厳しい環境で結構狂ったりしました。そのような環境ではホワイトオークでなくとも故障は出やすいわけですが。

そのようなわけで家具作り全般についての見直しを始めたのです。それは、工房の湿度管理・材料の乾燥・接着・塗装・加工技術(加工法、仕口)であったわけです。ほとんど家具作り全般ではないかという感じがしますが…。
その中で、木材の伸縮と、それを考慮した材料の使い方について述べたいと思います。この考え方は、非常に重要であるにも関わらず、日本のテキストにおいては、これまであまり力点が置かれていない部分だと思います。