家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

人造砥石について

前回では天然砥石について書きました。この際、やはり人造砥石についても調査、確認をしておかなければなりません。
ただ単にフィーリングでの良し悪しや優劣ではなく、きちんとした資料や説明のもとに、それぞれの砥石の特徴や長短所を把握し、一般的な評価に惑わされることなく、個人の好みや判断で選択していくことが大切であると思います。

トレードマークがエビ印のナニワトイシ株式会社(発売元:ナニワ研磨工業株式会社)に自社の砥石についての説明をして頂きました。
どこのメーカーもたいがいそうでしょうが、自社製品の製造法の一般向け資料というようなものはほとんど用意されているということはないわけで、私のような門外漢の質問に付き合って頂いた担当の方には迷惑以外のなにものでもなかったはずです、それでもきちんと誠意を持って対応して頂き、ほんとうに感謝しております。

極簡単にいうと、人造砥石とは金剛砂と呼ばれる研摩材と結合材をブレンドし、固めたものです。(同社はアルミニウムオキサイド(酸化アルミ)やカーボランダム(炭化珪素)などの研磨材も金剛砂としているようです)
製法にはビトリファイド法とマグネシア法と呼ばれる二種類があり、ビトリファイド法とは、金剛砂(この場合、一般的に炭化珪素が多い)、長石、陶石、粘土、接着剤 (合成糊、デキストリン 等)をブレンドした後、型に入れてプレスし、焼成炉で千二百~千三百度位で焼き固めます。長石、陶石、粘土は熱で溶融収縮し、金剛砂を包み込み、それによって全体に細かい隙間を生じ、研摩可能な砥石となります。(隙間に切り粉が入り研削が可能となる)
粒度の細かい研摩材の場合は焼成時の収縮が大きく、製品の不良率(破損率)が高いため、ビトリファイド法ではほとんど製造されないそうです。

マグネシア法は化学反応による砥石の製造法で、目の細かい砥石はビトリファイド法に代わり、この方法で製造されているそうです。
金剛砂(この場合、一般的に酸化アルミが多い)、酸化マグネシウムに若干の塩化マグネシウムを加え、その反応によってゲル化、硬化させる方法です。ゲル化はすぐに起きるので、ゲル化を抑える添加物(酢酸マグネシウム等)を加え、ゲル化前までに混練、成型、プレスし、高温、高湿の中で熟成させます。熟成は配合割合により二十日から六十日位かけます。その後、自然環境の中で約半年、乾燥、熟成させます。
この方法により、きれいで不良率の低い製品の製造が可能で、一平方センチ当り、五十トンのプレス成型で非常に緻密で硬いものが、また、一平方センチ当り、五十キログラム位で非常に軟らかくポーラスな砥石ができるそうです。
ナニワ研磨工業(株)のカタログの中で「化学仕上砥石」と書いてあるものは、このマグネシア法で製造された砥石です。

その他、人造砥石関連の質問をお聞きしました。
最近、セラミック砥石というものを見かけます、ビトリファイド法で製造された、つまり、焼成して作られた砥石は全てセラミック砥石と呼んでいいわけですが、あえてセラミック砥石と名付けられたものは非常に高品質(材質は同じでも研磨材がより均質 等)な研磨材を用いて作られた砥石に製品差別化、高付加価値化のため、あえてそのような名称を与え、販売している場合が多いそうです。

白い砥石があります。純度九十九パーセント以上の酸化アルミニウムは白色をしています。その高純度酸化アルミを用いて製造された砥石だそうです。

ダイヤモンド砥石ですが、同社の場合、アルミ基盤の上に約一ミリのダイヤ層を焼結してあります。これは、粉末ダイヤを石炭酸樹脂系の接着剤などと混ぜ、焼き付けてあるそうです。ただ、ダイヤ自体は大丈夫でも、十年位経つと接着層が劣化するという欠点があり、ダイヤ層を厚くしないようです。

同社のお話では人造砥石は、天然砥石に比べ、均質である、当たり外れがない、不純物を含まない、割れにくい、安価、研ぎおろしが早いなどの理由で自信を持って天然砥よりも良いとおっしゃっていました。
硬いといわれている天然砥石でも、使い勝手はそう感じるかもしれませんが、研磨材自体は人造砥石のほうがはるかに硬く、昔の職人は研ぎすぎてしまうといいます。

また、敢えて天然砥石のメリットなどを聞いてみました。
まず、使用感ですが、研ぐときに独特のフィーリングがある。次に、研磨された刃先を顕微鏡で観察すると研磨材の粒度により刃先がノコギリ状になっていますが、同じ粒度の場合、天然砥石のほうが人造よりもより細かくなるそうです。あまりデコボコがなくなり、直線に近くなっても切りにくいそうですが、その違いによる切削フィーリングの違いや、長切れするということはあるそうです。

カタログにはでていませんが、ナニワトイシ(株)でも、違う硬さのものを注文によって作っているそうです。結局、砥石の選択につきましても、いくらメーカーが自信をもった製品を製造販売しようと、最終的な選択は結局のところ、職人が使っている刃物の硬さや、好みなどによるということです。
各自がほんとうに納得のいく砥石に出会えれば天然であろうと、人造であろうとあまり関係ないことだと私自身は考えます。しかし、実際に使ってみないと良さはわかりませんから、良い砥石に出会うというのはなかなか難しい所だと思います。

■ナニワトイシ株式会社
〒520-32 滋賀県甲賀郡甲南町深川 1458 TEL:0748-86-5550

■ナニワ研磨工業株式会社
〒557 大阪市西成区天神森 1-17-17 TEL:06-661-1171

■松永砥石株式会社
〒550 大阪市西区南堀江 1-2-15 TEL:06-538-1001 (本社)
〒813 福岡市東区松香台 1-7-25 TEL:092-673-2315(福岡営業所)