家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

木工旋盤 WT-300 のチューンナップ 8

■WT300のインバータ化 3

三菱インバーター FREQROL-D700 のセッティング(備忘録)
最後の段階として、インバーターのセッティングに入ります。
インバーターは驚くほど多機能です。
マニュアルが判りにくく、セッティングから使うまでにかなり時間が掛かりました。

製品同梱の取り扱い説明書「基礎編」だけでは不十分です。
「基礎編」に付いている、「応用編」送付希望フォームをFAXし、「応用編」を取り寄せる必要があります。
(PDFファイルをダウンロードしてもいい)

■行った機能設定(パラメーター設定)

パラメーター設定変更方法

MODEボタンを押し、パラメーター設定モードに入る。
ダイアル(Mダイアル)を回してパラメーター番号を合わせる。
SETボタンを押す。
再度Mダイアルを回し、希望する数値を選択。
SETボタンを押す。

上記の方法で設定変更ができます。

工場出荷時は、シンプルモードパラメーター設定になっています。これでは、多くのパラメーターの変更ができません。そこで最初に、以下の方法で、全てのパラメーター値を変更できるよう設定変更する必要があります。

シンプルモードパラメーター変更方法

MODEボタンを押し、パラメーター設定モードに入る(PRMランプ点灯)。
Mダイアル回転→パラメーター番号:160
SETボタンを押す。
Mダイアル回転→設定範囲変更:9999(初期設定)→0(全パラメーター表示)。
SETボタンを押す。

これで全ての機能を、自分に合った設定に変えることができます。
以下は、私が行った変更です。

パラメーター番号:79

運転モード選択:初期値0→2(外部運転モード固定)
外部パワースイッチ(旋盤上)と、外部ボリュームによる周波数(回転数)調整を行っているため、外部固定にした。

パラメーター番号:72

PWM周波数選択:初期値1→10(注1)
当初、モーターからの音が耳障りだった。モーターが故障したかとさえ思った。これは、PWM周波数選択を変更することによって小さくすることができる。少ない数値で静かなものを選んだ。

パラメーター番号:7

加速時間:初期値10s→2s(秒)

パラメーター番号:8

減速時間:初期値10s→2s(秒)

パラメーター番号:75

リセット、PU停止選択・PU抜け検出:初期値14(本体、外部両方の運転モードで、本体上のSTOPボタン有効)→0(本体上のSTOPボタン無効)
初期設定だと、本体上のSTOPボタンで停止させると、復帰への手順が面倒なため、本体上のSTOPボタンを無効にした。

基本的にはこれだけです。

注1:PWM周波数変更
音の原因は、インバータに含まれている雑音(電気的に)のためにモータのコアが振動するからです。
雑音の主要因はキャリヤ周波数です。
インバータの波形はPWMという方式で擬似サイン波を作りますが、このときに基本となるベース周波数のこと。
どのメーカーも、一般的に、この周波数の初期値は2kHz位。所が、この2kHzという周波数は人体にとって一番耳障りな音に感じます。
音を消す対策は、このキャリヤ周波数を人間が聞こえる範囲外に設定することです。
通常、対策としては、10~15kHz以上に設定します。
ところがデメリットがあり、周波数を高くすると、素子(IGBT)のスイッチング周波数も上るため、スイッチングロス、つまり、発生熱が上昇します。
実際の使用ではロスが増えても問題ありませんが、インバータの容量によっては、できる周波数の上限が熱的に決まっており、できる、できない等は個別に検討が必要です。

■三菱インバーター FREQROL-D700 その他のセッティング

汎用磁束ベクトル制御の選択

これにより、大きな始動トルク、十分な低速トルクを得ることができます。
実際、どの程度効果があるのか、果たして必要か?、は、ビギナーな私には分かりません。
最初は、興味本位が大半でした。

磁束ベクトル制御とは?
負荷トルクに見合ったモータ電流を流せるように、電圧補正を行うことにより、低速トルクを向上させることができるというものです。
(詳しい理論は難しすぎて、私には理解不能)

設定

1.使用モータの設定を行う(パラメータNo.71)
 使用モータ設定→No.3(その他)

2.モータ容量(パラメータNo.80)
 適用するモータ容量→0.75Kw

注意:その他の場合は、オフラインオートチューニングを行わなければなりません。

オフラインオートチューニングとは?
汎用磁束ベクトル制御で運転する際、モータ定数を自動測定させることで、モータ個々の設定ズレ、他社モータ、配線長が長い場合でも最適な運転特性でモータを運転できるようにするものです。

設定

1.オートチューニング設定(パラメータNo.96)
 設定→No.11(モータを回転しないでオフラインオートチューニングを行う)
終了までに数秒~10秒程度かかります。

以下、各自の使用モータの規格にあわせます。

2.モータ励磁電流(パラメータNo.82)
 モータ励磁電流(無負荷電流)→3.2A

3.モータ定格電圧(パラメータNo.83)
 モータ定格電圧→200V

4.モータ定格周波数(パラメータNo.84)
 モータ定格周波数→60Hz

以上で、汎用磁束ベクトル制御による運転を行うことができます。
また、オートチューニング後、[パラメータNo.90→モータ定数]にて、チューニングデータが自動設定されているのを確認できます。

■汎用磁束ベクトル制御について

インバータの制御方式のひとつで、現在の製品は、制御方法が何種類か設定できます。
この製品の工場出荷時点でのセッティングは、単純に電圧と周波数を発生させるV/fコントロールだったはずです。それを、この磁束ベクトル制御に変更したということです。

V/fコントロールの場合

・単純に決められた電圧と周波数を発生させるだけ
・だから負荷トルクはどうなろうが知らない
・起動時にトルクが弱い(せいぜいモータ定格トルクの100%程度)
・負荷に対して速度低下がある(100%トルク要求に対し、2%程度速度低下する)
・急激な負荷に対し、過電流の発生可能性がある

ベクトル制御の場合

・負荷が要求するトルクを発生しようとコントロールする
・起動時のトルクは150%位発生できる
・負荷が掛かってもその速度を維持しようと必要トルクを発生し、頑張ります。
・頑張っても若干速度ダウンしますが、V/fに比べれば早々少ない
・急激な負荷が掛かっても過電流など起こらなく、安定した運転を継続する
・内部でベクトル演算するので、最初に一回、必ずオートチューニングが必要

という違いでしょうか。
ベクトル制御の方が、V/fに比べると数段ベターですし、速度変更ボリュームをさわっても安心してコントロールできます。

インバータ導入で、お使いの旋盤が圧倒的に使いやすくなることは間違いありません。この記事が、導入に際しての何らかの指針になれば幸いです。
インバータの理解、導入に当たっては、「T's 韓国日記」のMさんに多大な御指導を頂きました(感謝)。