家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

家具制作鯛工房の家具デザインについて

私は東京芝で西洋家具を作ってきた故菊地勇から家具作りを学びました。日本風にアレンジされた洋家具です。その後、長い時間をかけ、その様式や工法を自分なりにアレンジしながら家具を制作してきました。
同時に、子供の頃から愛着のあったお寺や、神社の境内や建築物に代表される日本の様式を家具に反映できないだろうかということを考えていました。私の中にある祖国のイメージや伝統建築への解釈を家具、特に箱物に込められないだろうかということです。

家具・椅子工房|家具制作鯛工房|厨子(チーク) 仏教寺院や伊勢神宮の神殿、あるいは近辺のお寺や神社のたたずまいやそのディテール、さらに、秩序感や清楚感などといった、漠然としたそれらの持つ概念を「内に込める」というテーマとして制作を始めたのです。これも私の中の一つの日本的なるイメージの立体言語への置換でありますし、以降、この試みは様々な作品に投影させてきました。

特に仏壇やキャビネット類は、出雲大社(出雲市)・神魂神社(松江市)の「大社造り」、伊勢神宮(伊勢市)の「神明造り」などをモチーフにしています。「神明造り」や、「大社造り」は私の中の日本的なイメージに非常に近いモチーフの一つだからです。これらの神社には何度も足を運び、そのたたずまいや全体の雰囲気、同時に先達の技と思いを感じたものです。

私は、日本の風土や長い歴史が培った様式は極東の一地域性を超え、国際的評価に耐えうる標準性を有する高度な文明力を持つと考えています。日本の伝統的な形式やアイデンティティの、家具を通じての解釈のアプローチは今後とも続けていきたいと考えています。それが聞き取りにくい方言ではなく、標準語になるかどうかはさておき…。

スタンダード性について

普遍的なデザインを目標とする。これは私の命題の柱です。永く使い続けられる重要な要素には普遍的なデザインがあるということは重要なポイントの一つですが、これを生み出していくことは非常に難しい問題です。
斬新で短絡的に興味と注意を惹くデザインを生み出すことはある意味において容易ですが、個性やアイデンティティを有しながらスタンダードとなるデザインを得るのは容易ではありません。しかし、私が憧れ、追求して来たのは永遠のスタンダードです。これは、かつて私が行ってきた工業デザインの世界では実現が困難な仕事でした。

家具・椅子工房|家具制作鯛工房|厨子(オーク) スタンダードの手本となるのは、古今東西の匿名の工人達が今に伝えた伝統的な様式です。そこには彼らの解釈の淘汰の積分があり、長い時間をかけて民族固有の文化として収束してきました。そこには物質化した普遍という概念が見えます。
答えはすでに用意されています。大切なことはそれらを解釈しながらも、意匠の主だった表層には乗せることなく、隠し味として現代生活に、あるいは国際感覚に適合させられるよう、個性を持ったスタンダードを創出していきたいと考えています。

椅子について

家具制作鯛工房の椅子は、グリーンウッドワーキングで作られる椅子(生木から作る椅子)の技術をベースに制作しています。
この技術で作られてきた椅子は、ラテン諸国のスラットバックチェア(ラダーバックチェアとも言う)であり、英国のウィンザーチェアがあります。収縮を考慮した、非常に合理的な椅子です。両方とも、長い時間を掛け構造的にもデザイン的にも洗練されてきました。 ウィンザーチェアは、英国のチェアメーカーである、トム・サックレイに作り方を習いました。

工法について

家具工作法はロジカルです。私は無垢材を用い、柄組(一般に言われる伝統的木工技術の範疇の木組み)等を用いて品物を作りますが、大切なことは木材の伸縮を考慮し、あるときにはその性質を利用して組み立て後に強度が増していくような工法を考えた作り方を選ぶようにしています。

木工の世界は広くて奥が深いものです。日本人はモノ作りに秀でた民族だと思いますが、西洋の木製家具制作の伝統と体系化した理論にも目を見張るものがあります。私は、東西の木工技術に範を取りながら、総合的にバランスの取れた高品質の家具を提供していきたいと考えます。