曲げに必要な機材について
スチームベンドに必要な機材について説明していきます。主な機材として、スチーマー、ベンディングハンドル、ベンディングストラップ、フォーマーなどが必要となってきます。
■スチーマー(蒸篭)
常圧法での曲げに使用するスチーマーは伝統的なセイロ(蒸篭)と基本的に同じです。鍋の上に直接スチーマーを乗せて材を蒸します。蒸した材は冷える前に速やかに型入れし、曲げ始めなければなりませんので、通常は工房の中で蒸します。
圧力鍋などからホースでスチーマーに蒸気をみちびく方法などもありますが、この方法がいちばん簡単です。
以下の三点の理由から、木製スチーマーがベストだと思います。
- 各自が必要とするサイズで、容易に自宅での自作が可能。
- 製作費が安い。材料費が安く済む。マリングレードのプライウッドがベストであるが、安いコンパネでも十分使える。
- 保温性が高く、結露しにくい。つまり、スチーマー内部の温度低下が少なく、特に冬場には効果的である。同じ理由から、スチーマー外部の温度が高くならないため、手で触れても火傷しない。
私の一作目のスチーマーは、幅240mm : 高さ195mm : 長さ1270mm(外形): 板厚4mm のイエローパイン製でした。
現在主に使用している三作目のスチーマーは、幅260mm : 高さ225mm : 長さ1625mm(外形): 板厚12mm のコンパネ製です。コンパネは耐水性が高く、長時間のスチーミングにおいても反りにくいからです。なお、マリングレードの合板はより耐水性が高く、耐久性もあります。
扉とその反対側のフタは二重にしています。扉の内側の一枚は寸法に多少余裕を持たせます。反ってきたとき扉が閉まらなくなるのを防ぐためです。本体のシーリングは行っていません。蒸気は多少もれますが、問題はありません。蒸気は適度に逃げるため、特に蒸気抜きを設ける必要はありません。
蒸し器の内部の底には棧を取り付け、材を浮かしておかなければなりません。これは、蒸気をまんべんなく循環させるためです。
蒸し器の底から10~20mm 程度浮かした所に何本かの 「丸棒」 を渡す方法や、入り口近くに一本の桟を取り付け、材の片方を持ち上げるという簡単な方法でも構いません(私の方法は後者です:写真参照)。材料の数が多く、スチーマーの中で何段かになる場合も、材を浮かせるために桟を挟みます。
蒸気の入り口ですが、市販の四角い木製セイロは、蒸気の入り口のために小さい穴が下部に一つしか開いていませんが、材に蒸気が局部的に集中するのを避けるため、開口部を大きく、あるいはマルチポートとします。我々は、セイロのイメージが強いせいか、一つで良いという感覚がありますが、欧米のものは開口部を大きく取るようです(写真参照)。
フタは上に開くようにし、ロックは本体に取り付けた平ゴムをフタに引っ掛けてするようにしています。何日も長時間スチーミングを行いますと、コンパネでも反ってきます。フリキシブルなゴムストラップは反りに順応するのです。
材を取り出した後は、直ちにフタを閉めてロックし、曲げに入る必要があります。寒い冬場は蒸した材がすぐに冷え、曲がりにくくなりますので、スチーマーから材を取り出した後は一刻も早く曲げ始めなければなりません。このように簡単に引っ掛ける方法が素早くて都合がいいのです。マレーシアで作ったスチーマーには、トラックのチューブを切ったものを木製の取っ手に引っ掛けるようにしていました。
使用中のスチーマー(写真最下段)はマレーシアでのスチーミング風景です。
合板はマリングレード(厚さ:12mm)を使用しています。ガスコンロで蒸しています。チューブを利用したゴムストラップがわかると思います。