立体構成
言葉は要らないかもしれない。
永い間思っていたものを形にした。
*
様々なものに憧れてきた。
その多くは人々の 「知」 が生み出してきた、「用」 が持つ必然の 「美」 だった。
木製の道具から、木造建築を支える木組と立体構成。
帆船を構成するロープの緊張。
内部に蓄えられているのは、外界へ押し返しているフォース。
見事なまでに釣り合い、形態をなす。
そして 「人」 は、
匿名の工人達の解釈の積分は、
その仕事をして彼らの解釈を、
遥かな高みへと持ち上げてきた。
ときには時代様式と呼ばれ -
あるいは、民族固有の形態となって収束し -
また、あるときには不連続の技術を連続したものとして機能させる基盤として -
「素材」「理論」「技能」「感性」 の融和は、古典をして限りない空想 (ロマン) へ誘う。
そんな、必然からくるの形態の美を、一つの解釈とし、「木」を用い、抽象形態として具現化しようとした。
古い歴史の彼方から、
大洋を渡りくる風を思った。
木製の構造物に込められた、
技の継承と解釈を思った。
また、現代のテクノロジーの成果を、同一の軌跡として重ねた。
長く引っかかっていたものを、
一つの形態として収束した。
さまざまなイメージが混交している。ともあれ、これで終えることができる。
主材:栓・黒檀
仕上:ワックス
寸法:650mm(W)×1070mm(D)
制作:1998年8月 / 葛城