FDB Mobler / ダイニングチェア J80
FDB Mobler 社(デンマーク)製のダイニングチェア J80です。デザインはJorgen Baekmark。前回紹介したハンス ウェグナーによるデザインの、Carl Hansen & Son社製ダイニングチェア(CH-36)と同じようなグレードのシンプルなデザインのチェアです。
材質はオーク、仕上げはオイルフィニッシュ。座り心地はCH-36とほぼ同等です。
基本的な構造はポスト&ランチェア(スラットバックチェアともいう)と呼ばれる椅子から来ています。それにデザイン的なアイデンティティとして、ウィンザーチェアの特徴であるバックスピンドルを取り入れています。
この椅子もCH-36と同じく全ての脚はストレートで垂直です。シートは矩形。高級品ではない、一般向けのダイニングチェアです。最近のイタリアンモダンの中にあると若干年代モノという印象は受けますが、このようなデザイン条件の椅子としては上手くまとめてあると思いますし、ディテールを見ると面倒な加工や、コストのかかるデザインを採用しているのには驚かされます。おそらく同世代の国産チープモデルは惨めで比べ物にならないのではないかと思います。
余談ですが、この条件でデザインをまとめるのは難しい作業です。美術系学生への椅子の課題として良いテーマかもしれません。
全てのシートレールは、CH-36のように内側にツイストさせておらず、水平に組まれています。
シートレール(前・側)のサイズ
幅:36mm
厚さ:22mm
柄径:19mm
貫のサイズ
最大径:22mm
柄径:19mm
前脚のサイズ
(脚は直線ではなく、なだらかに「R」が付いています。つまり、平行部分はありません)
径(上):33mm
最大径:38mm
径(下):28mm
座編みにする場合、スピンドル部分を逃がさなければなりません。そのための小穴が開けられています。穴のサイズは、6×20mmです。ペーパーコードはこの穴を通して編まなければならないため、編み上げるにはかなり時間がかかります。
スピンドル径
上部:15mm
下部:19mm
木殺しされたシートレールの柄部分です。耐久性のための気配りです。貫にはこの木殺し加工は施されていないようでした。
脚の端面(上面)のラウンド加工が綺麗です。この場合エッジ部分の「R」をある程度シャープに残しておくことが綺麗に見せるコツです。
笠木は無垢材を曲げ加工して用いています。また、笠木は水平ではなく、多少下に傾斜させています。スピンドルとの関係角を大きく取りたいためです。そのため、後脚との取りつけは90度ではなく、多少角度がついていますので加工は若干面倒になってきます。
写真左(多少見にくいのですが)。
笠木
厚さ:20mm
幅:40mm
後脚
径(上):28mm
他は前脚と同サイズ
珍しい例ですが、後サイドシートレールにも捨て巻きを施しています。
両サイドのスピンドルまでは編まずに、スピンドルを出しているため、位置合わせです。小穴を減らして早く編むというのは、間違いなくその理由の一つであると思います。
総高さ:815mm
総幅:600mm (前・後脚共、同サイズ)
シートレール高さ(前) :445mm
シートレール高さ(後) :420mm
シート奥行き:402mm (シートレール最前端から最後端まで)
多少寸法の取り忘れもありますが、必要であれば、原寸図は描けると思います。
柄の木殺しは大切ですが、もっと大切な点は柄部分の含水率を極端に下げることだと思います。木殺しを行っても含水率が高ければ柄は緩みます。