サム・マルーフのオイルミックスチャーについて
アメリカの家具作家サム・マルーフが、自らの作品に塗っているオリジナルオイルは非常に参考になりました。このオイルは 「サム・マルーフ・オイル」 としてアメリカでは市販されています。私のオイルの混合は、彼のオイルがヒントになりスタートしました。
サム・マルーフが混合しているオイルと、その割合を以下に示します。
- 煮亜麻仁油1/3
- 生桐油1/3
- 油変性ウレタン樹脂塗料1/3
まず、煮亜麻仁油(ボイル油)と、生の桐油を全量の三分の一づつ用意します。
桐油は乾燥性が強いため、生のままでも乾燥しますし、ボイル油も同様です。この場合は、油変性ウレタン樹脂塗料の乾燥に引っ張られて、より早く乾燥します。
桐油を加える意味は耐水性、耐湿性を増したいためです。ただし、桐油の割合が高くなりすぎると艶がなくなるので、若干、注意する必要があります。この場合は、艶のあるウレタンを混ぜるので艶が無くなるということはほとんどありません。
最後に酸化乾燥型油変性ウレタンを三分の一加えます。前述したように、これはオイルの乾燥を早めるということに加え、耐水性、耐湿性、さらには塗膜硬度の向上が目的です。
■混合用の油変性ウレタン樹脂塗料についての注意事項
ウレタン樹脂塗料にもいろいろな種類があり、製品の種類によっては、オイルとうまく混ざらない可能性もあります。
確実なものは、一液性で、溶剤がミネラルスピリット(塗料用シンナー)を用いるタイプのウレタン塗料です。
一液タイプのウレタン塗料にも、湿気硬化型油変性ウレタンと酸化乾燥型油変性ウレタンがあり、間違いやすいので注意する必要があります。
湿気硬化型ウレタンは空気中の湿気と反応し硬化するタイプですから、オイルと混合する場合は、オイルの酸化乾燥のプロセスと同じ、酸化乾燥型油変性ウレタンを選ぶべきでしょう。
気温が10℃ を下回る場合は、オイルは乾燥に非常に時間がかかります。油変性ウレタン樹脂塗料を混合するメリットの一つは、乾燥時間を早めることができるということです。
オイルに油変性ウレタン等を混ぜるのは効果的なのですが、混ぜすぎますと、木部表面に薄い塗膜が形成されます。
しかも、この塗膜は、オイルと混合したことによって、本来よりも塗膜強度の落ちたウレタン塗料の塗膜と考えられます。テーブルトップの「角」など、使用条件の厳しい部分は、角の塗膜が剥げて見苦しいものとなりますので要注意です。
これを解消するには三点考えられます。第一には、樹脂分やウレタン等の混合率を高め、かつ、もっと厚塗りにする・・・これは、普通の塗装になってしまいます。オイルフィニッシュを選んだ時点で、これは考えられませんね。
第二は、なるたけ塗膜が形成されないよう、混合量を増やしすぎないようにする。
第三に、メンテナンスをきちんと行なう。少なくとも、年一回くらいテーブルトップだけでも再塗装する(理想ですが)。
お分かりのように、混合量を増やしていくと、限りなく塗膜仕上げに近づいていきます。それを避け、木肌の良さを生かすためには、製品表面に塗膜がほとんど形成されないようにするしかありません。つまり、ウレタンの混合量を増やしすぎないということです。
自分で混合した、サム・マルーフのオイルで試しますと、一液性の油変性ウレタンだけを用いたオイル仕上げと、あまり変わらない仕上りになります。