家具制作鯛工房

モダンでシンプルな家具を制作する家具椅子工房です

木工旋盤 WT-300 のチューンナップ

プーリーカバーとノブ 以前に紹介しました、ナカトミ産業が販売している木工旋盤WT-300の改良です。
この木工旋盤は安さが最大の取り柄ですが、基本的には使いやすい木工旋盤です (長所については以前の記事を参照してください)。

しかし、弱点や問題点もあります。購入後、その問題点を改善しました。参考にして頂ければ幸いです。
製造年度によって各部に多少の違いも見られるようです。すでに改善されている部分もあるかもしれません。念のため、申し添えておきます。

■プーリーカバーのロックボルトの交換

カバー用ノブ本体 ウインザーチェアを作る場合には、ラウンダーやトラッピングプレーンをよく使いますが、それらを使う場合には旋盤の回転速度を最も低くしなければなりません(およそ400rpm前後)。そのため、プーリーカバーのロックボルトを回す機会は多いのです。

しかし、私が購入したタイプでは、プーリーカバーは、ネジ部が長いボルトによって固定されていました。長いネジを回すには時間がかかります。また、ボルトを回すためにはドライバーが必要なため、迅速な作業ができません。そのため、手で回すことができ、かつ、ネジ部の短いノブへ交換します。写真のノブは直径35mm、ネジ部長さ12mmのものです。

■ツールレストホルダーロックレバーの交換

ツールレストホルダーロックレバー (オリジナル) ツールレストが作業中に動くと危険です。しっかりと固定しなければなりません。しかし、オリジナルのレバーはかなりお粗末です(最近の物はわかりませんが・・)。写真でわかるように、レバーの長さが足りないためにツールレストホルダーを強く締めつける事ができません。さらに、ワッシャの厚みが薄く強度不足です。これらを交換し、使いやすくします。

フラットテンションレバー 交換したハンドルです。フラットテンションレバーとも呼ばれているものです。
レバーの長さは、およそ100mmです。十分な力でツールレストホルダーを固定することができます。
しかし、これだけの長さがあると、細い物を削る場合にツールレストポストにぶつかってしまい、回すこと(1回転すること)ができません。ところが、このレバーのハブ部分には内側にセレーションと呼ばれる一対の内ネジ、外ネジが切られており、通常はスプリングの力で噛み合っています。

ツールレストホルダーロックレバー・通常の状態 レバーを真上に引き上げるとセレーションの噛み合いが外れてロックが解除されます。
この状態で、レバーは任意の位置へ回す事ができます。レバーを下げるとスプリングの力でセレーションが噛み合い、レバーはロックします。写真は、通常の状態とレバーを持ち上げた状態です。

ツールレストホルダーロックレバー ・持ち上げた状態 このレバー用の座金(ワッシャー)は重要です。 ツールレストホルダーの溝幅が広く、座金のかかり部分が少ないため、薄い座金ですと締め付けたときに変形してしまいます。そこで、直径33mm、厚さ4mm、内径8mm のワシャーをオーダーしました。ワッシャの直径はフラットテンションレバー本体の直径に合わせています。

カラー・ワッシャー・ハンドル ツールレストホルダーの溝幅が約16mmと広く、フラットテンションレバーのネジ径は8mmですので、ツールレストホルダーがかなり遊びます。遊んで片方に寄るとワッシャのかかりも減ってきますのできちんと固定できません。そこでカラーと呼ばれる筒状の部品をフラットテンションレバーのネジ部に被せるようにセットし、遊びを最小限にします。これで、いつもフラットテンションレバーのネジ部はツールレストホルダーの中央にきます。カラーの高さはツールレストホルダーの厚みより低いものを選ばないといけません。
私の選んだカラーのサイズは、直径15mm、内径8mm、高さ15mmです。これで、ツールレストホルダーの固定は万全です。

■モーターの取り付け調整、ベルトテンショナー

ラバーテンショナー この木工旋盤の最大の弱点はモーターの取り付け部分、及びベルトテンショナーにあると思われます。しかし、改良可能な範囲ですので諦める必要はありません。

最初にモーターのシャフトとドライブセンターが正しく平行になるように調整します。つまり、プーリー同士を平行にするわけです。調整後、使ってみてベルトのかすがカバー内部に付着するようでしたら平行が出ていないのが原因ですので再調整します。

テンショナーを外し、モーターを持ち上げたところ ベルトテンショナーとしてのボルトが1つ付いていますが、これは使い物になりません。無理に引っ張ろうとすると、モーターベースが変形しかねません。そこでこのボルトを取り外し、タイヤチューブを利用したストラップでモーターを引っ張るようにしました。勿論スプリングを利用しても可能です。

先ず、モーターベースの下に、そのクリアランスより僅かに(0.5~1mm 程度)薄い板を入れ、ワークベンチ甲板に固定します。ゴムベルトはモーターのコンデンサーケースと作業台に掛けます。このテンションによって、モーターはモーターベースに差し込まれた板と密着します。
オリジナル状態では、モーターは2点で支えられた不安定な状態ですので振動が大きいのです。しかし、この方法で振動を大幅に軽減させる事ができます。板の厚みが薄くなると強い力でモーターを引っ張らなければ板に密着しませんので、板を薄くする必要はありません。わずかに薄い板ですと軽く引っ張るだけでモーターは容易に板に密着します。それで十分です。そのため、コンデンサーケースに引っかけても大丈夫です。

この方法のメリットは、ゴムベルトを外すだけで、簡単にベルトの架け替えるが行えるということです。また、作業中に突発的に過剰な力がベルトに掛かった場合でも、ゴムベルトが簡単に伸びてその力を逃がしますから安心です。
写真下はゴムを外し、モーターを持ち上げた状態。

■ハンドホイール用ワッシャーの追加

ハンドホイールとワッシャー テイルストックボディにあるライブセンター(あるいはテイルストックセンター)を動かすためのハンドホイールとテイルストックのクリアランスが大きく、およそ4mm前後あります。そのため、材料を固定したり、外したりするたびにハンドホイールを4mm分余計に空回しをさせなくてはなりません。これは迅速な作業を阻害し、作業の「ノリ」をそぎます。そのため、この隙間にワッシャを挿入し、材料を取り出したいとき、すぐに逆回転に入れるようにします。
使用したワッシャは、外形35mm、内径19mm、厚み3.5mmです。ワッシャはハンドホイール左側に入っています。写真下。

テイルストック全体 木工旋盤本体の改造は以上です。これで快適な作業ができます。こんなことに労力を費やすのならもう少し高級な旋盤を購入したいという方もいるかと思いますが、これらの作業は私には喜びです。日曜大工、ハンドメイドの喜びがあるからです。安価ですが、十分実用に耐えるWT-300が、より使いやすく変身します。
ここで使用したノブ、ワッシャ、カラー、フラットテンションレバーは、(株)ミスミ、「FA用メカニカル標準部品カタログ 2001.5~2002.4」から選んでオーダーし、使用しました。

■木工旋盤用ワークベンチ

自作木工旋盤用ワークベンチ 長年の懸案でした木工旋盤用ワークベンチを製作しました。

サイズは1500(W)×700(D)mm。高さは通常使っている作業台に合わせて830mm。旋盤作業には少し高めかもしれません。脚、横框等には壊した古い物置の材料をリサイクルしました。十分乾燥していて好都合でした。作るのは大変ですが、後々便利なため、引き出しを6杯付けました。甲板(天板)にはコンパネを3枚張り合わせ、本体には、表面からコーチネジで固定しました。側、後ろの鏡板、前板を除く抽斗(引き出し)には作業を簡単にするため、コンパネを使用しました。

埋め込みナット 旋盤はボルトで甲板に固定していますが、フットと呼ばれるパイプ端の部品は、長いものを加工する場合にテイルストックを取り外す時、一旦フットも取り外さなければなりません。その場合に都合のいいようにムラコシ精工製、埋め込みナットを甲板下面に埋め込んであります。

抽斗の引き手は古いブラス製。町内のさびれた金物屋で購入しました。このような時には、はやらない田舎の金物屋は利用価値があります。今時誰も買わないのですが、結構良いものが昔値段であるのです。