座面加工
スピンドルや脚などの、丸いパーツを足踏み式の旋盤で作り、乾燥炉に投入したら、次は座面加工に入ります。
私が参加したのは、デザイナーズ ウィークと言い、通常の椅子作りのコースではなく、各参加者が、思い思いのオリジナルデザインのウィンザーチェアを制作する特別なイベントなので、座面の形状は千差万別です。
各参加者は、必要な幅や厚みの板を、あらかじめ製材した一枚板のストックの中から選び、必要分を切り取ります。
切断で使われるのは、全て日本製の横引き鋸です。
(西洋の鋸は、日本とは逆で、押して切ります。しかし、日本製の鋸を一生懸命押して使っている参加者もいました)
必要なサイズに切断した後、材に座面の形状を鉛筆で描きます。
私は、合板で制作した座面のテンプレート(一種の定規)を持参して来ましたから、マーキング(墨付)は、素早く完了しました。
異国での慣れない作業は、何が起こるかわかりませんので、出来る用意はしておくのです。
そして、一枚板から、座面を伝統のビームソー(弓鋸)で切り出します。
ビームソーは、初めて使う道具です。当然、押して切ります(画像下)。
ウィンザーチェアの座面は、通常丸っこい形状です。
小さなカーブがあると、ビームソーのブレードは、どうしても捻(ね)じれます。
私が使用したとき、ブレードは、すでに捻じれが生じていて切り難く、ブレードを出来るだけ強く張って使用しました。
シートの裏面、側面は、ブロックプレーン(平鉋)、スポークシェイブ(南京鉋)を使用して仕上げます(画像一番下)。
座面は、トラビッシャー(Travisher)と、インシェイブ(Inshave)を用い、仕上げにはスクレイパーを用います。
ハローアッズ(Hollow Adze / 内丸の斧(チョウナ))を使用した座ぐりの方法も紹介されましたが、アッズを使用する参加者は、ほとんどいません。
ブレードの「R」が異なるトラビッシャーが、3種類用意されていました。
この工具も、座面成形の定番工具です(ハンドルとブレードの距離が近くて大変使いやすい)。
ただし、小さな曲面は削れません。
(欧米では、異なる「R」のトラビッシャー用ブレードが売られています)
サンドペーパーは一切用いません。
ただし、スクレイパーがよく切れれば、問題はありません。
全ての工具は、きちんと整理され、所定の場所に置かれている。
スタッフが、散らかった工具を常に元に戻し、切れなくなった刃物は、ダイヤモンド砥石で、結構頻繁に研磨しています。
ヨーロッパの刃物は硬いので、ダイヤモンド砥石を使用しないと研磨に時間が掛かります。
刃物ではなく、結構大きなダイヤモンド砥石を動かして研磨しています。これも日本と逆。
わっせ、わっせと座面を削ります。最初はトラビッシャー、次にインシェイブ、仕上げはスクレイパーで。
英国人達も、かなり削り込んでいます。
彼らは、時間が無くても適当で済まさず、自分の納得する所まで作業を続けます。その作業が、一人だけになってもです。
団体行動を取らないと、不安で安心できない我々とは逆です。
最終的に、薄い所で、10㎜程度まで削りました。
(2015/04/22)