ヒールズへ
2月3日、飛行機から見る早朝のヒースローは、雲が低く、うっすら雪が積もり、見るからに寒そうな気配が気分を萎えさせます。
セントラルロンドンは雪こそありませんでしたが、冷え込んでいました。
宿のチェックインまでの時間が大層長く、コーヒーを舐めるように飲みながら、じっと待っていました。
午後から冬物衣料を買いに、「Muji」や「H&M」があるコベントガーデン( Covent Garden)へ行き、帰宅後、ちょっと横になったつもりが、目覚めると深夜に近いではありませんか。
必ず遂行しなければならない夕べの義務、パブでのドラフトビアを飲みに行かないなんて・・・。
長いフライトのせいでした。
ホテルアパートメントから、会場のヒールズまで、徒歩でおよそ10分強。
近くには、ロンドン大学や大英博物館もあるロンドンの中心地です。
トッテンハム コート通り(Tottenham Court Road)沿いには、ヒールズ(画像上)を始め、大小様々なインテリアショップが並んでいる、高級ショッピング街です。
ヒールズの2階には、私のデザインのテーブルセット(画像下)が置いてありました。
不思議な感じでした。ウィンザーチェア発祥の地で、私のウィンザーが製品化されていのは光栄でした。
5年前、後先考えもせず、借金をし、100%デザインエキシビション ロンドンに出展しました。
それまで、ウィンザーチェアやスラットバックチェアなど、グリーンウッドワーキングの椅子に焦点を当て、作って来ました。
その成果を、ウィンザーチェア発祥の地、英国で評価を仰いだのです。
それが全ての始まりでした。
グリーンウッドワーキングの椅子を選んだ理由というのは、木の伸縮を最大限利用する事により、壊れ難い構造を持つ、極めて合理的な椅子だからです。
それらの椅子の起源は、中世ラテン諸国と言われており、長い歴史の中で、壊れないよう、技術的な熟成を重ねてきました。
よって、構造的にもデザイン的にも非常に完成された椅子だと思います。
だから、ある面で地味で、デザイン的に新たな解釈を加えることは難しく、余計な事になりかねないのです。
しかし、私は、伸縮を生かす構造に魅せられて、作る努力を始めたのです。何しろ、曲木から独力でマスターしなければならなかったからです。
この椅子のノウハウを知る日本人は、当時ほとんど存在しなかったと言っていいのではないかと思います。
およそ、25年前のことです。
もうすぐ、イベントの開始時間ですが、皆が揃っていないので、我々は、コーヒーを飲みに行きました。
このアバウトさが、気持ちを楽にします。
勿論、スタートに際してのセレモニー等はありません。
いつの間にか、始まっているというような状況で、参加者は、かわるがわる余裕のお茶を飲むのです。