サワン カップボード
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私が師事した家具職人、故菊池勇は、戦後の東京芝で洋家具を作っていました。
私は彼に、東京の洋家具の作り方を習いました。
それを基本に、構造各部、ディテールを自分なりにアレンジし、標準化していきました。
このカップボードも、その手法に沿って制作したもので、芝の洋家具の伝統を継承しているものと自負しています。
ビクトリアンスタイルを除き、芝の洋家具もシンプルですが、さらにシンプルなものとしています。
各部の面取りも、標準化し、シンプルなものとしています。
本体は、基本的に框組構造としています。工程数は増えますが、無垢板作りに比べ、故障が少ないからです。
縦框は、家具作りに於いてはポピュラーではありませんが、「角」としています。これは柱の概念です。つまり建築や建築様式を意識しているからです。また、横と奥行き方向の柄(ほぞ)長さを揃えることができるため、強度が確保され易いのです。
東京芝の家具作りは、薄く、狭い材料を使う事が基本です。
これは、木材の収縮の影響を最小限にし、故障を防ぐためです。また、材料の無駄な使用を省き、軽くて、見た目も軽快感のある家具にすることが出来るからです。
框厚は、基本的には、8分(24㎜)です。我々は、素材の関係から、24~25㎜にしています(小物を除く)。
鏡板厚は、基本的に、4分(12㎜)にしています。厚くても5分(15㎜)以下にしなければなりません。厚すぎる鏡板の変形は、框組フレームが吸収できず、故障の原因となりますし、重くもなります。従って、鏡板は面取りのできる、必要最小厚で良いわけです。そのための、4分厚としています。