人造砥石について 2 (補足)
人造砥石メーカーも最近は経営的には苦しい状況だそうです。以前は二百社程度あったものが最近では六十数社まで減ってきているそうです。
精密成形加工技術などの進歩にともなって、時間やコストのかかる研削や研磨作業を減らす方向へ動いているということがその理由の一つだそうです。ただし、最先端分野での研削や研磨技術は必要の度合いを深めており、人造砥石メーカーも専業化の方向へ向かっているそうです。
仕上砥石ですが、良い天然物が出なくなり(あるいは非常に少なくなり)、良質の人造仕上砥石の必要性がいわれてきたわけですが、昭和三十年頃からようやく質の良い、マグネシア法による工業的な仕上砥石の製造が可能になってきたそうです。
ビトリファイド法(焼結)による仕上砥石の製造は可能ですが、結合材である陶石などの粒子は金剛砂(研磨材)より粗く、刃物が砥石表面を滑って研ぎにくいということがいわれます。ちなみに焼成時に砥石に形成される末盤(みばん)と呼ばれる細かいポーラスに切り子(研ぎカス)が貯まり、排出され、研ぎ続けることができるそうです。ビトリファイド系仕上砥石はその末盤が小さいということです。
研ぎ原理の違いですが、ビトリファイド砥石は研磨材が固定されたような状態(サンドペーパーのようなもの)であり、マグネシア砥石(化学砥石、超セラミック砥石などと呼ばれるもの)は水によって砥石自体が溶け、それにつれて次々と新しい切刃が表面に析出し、また研磨材も溶けだし、浮遊した研磨材が同時にコンパウンドで磨くような感じで研げるため、研削力に富み、目詰りのない安定した研ぎが行なえるそうです。
マグネシア砥石は砥石が溶けるため、使用後は水に浸けておいてはいけません。また、この砥石は固めるのに塩化マグネシウムを使用していますが、それが刃物を錆させます、そのためエンジンのシリンダーの研磨(ホーニング)にはビトリファイド系の砥石が用いられているそうです。研磨後は刃物の十分な水洗いが必要です。
キング砥石は全て焼結品(ビトリファイド砥石)だそうです。キングのお話では、マグネシア砥石は経年変化で硬度変化を起こすので砥石(この場合の砥石とは我々の使う角砥石の意)には不向きゆえ、我々は製造していませんとおっしゃっていました。
ナニワ砥石のお話では、たしかにそのような弱点はあり、使用法にもよりますが、三~五年は大丈夫だとおっしゃっています。また、マグネシア砥石の良さは認識されており、簡単に製造できますが、熟成期間も必要であるため製造コストがかかり、手を出しにくいということはあるのではともおっしゃっていました。
その他の関連事項です。カーボランダムはダイヤについで硬く、研ぎ下ろしは早いのですが砥粒がとがっており、刃物に傷が残るため主に荒砥に用いられています。中砥から仕上砥はほとんど酸化アルミが用いられていますが、各社のカタログにはなぜか特殊砥材となっています。白いものは酸化アルミでもより純度の高いホワイトアランダムを砥粒に使用したものです。また、極薄い石鹸水で研ぐというのは結構いいそうです。
やはり十分な商品情報が開示されていないという感じがします。商品のメリット、デメリットを知って使用するということは大切です。
マグネシア砥は確かに研ぎすべりはないと思います。しかし、すべての砥石は他の評価がどうあれ、結局は使用者の好み、主体性で選択されるものですから、ある方が、天然砥石であろうとも見向きもせず、キング赤砥石やエビ印超セラ仕上砥でも、それはそれで、十分正しい選択であり、尊重されるべきものであると私は考えるのであります。